政治に「気持ちが湧く」UXを。デザインで民主主義をアップデートする試み
政治資金収支報告書や、国会議論の議事録。これらは私たちの社会を形作る重要なデータですが、実際に目にしたとき、皆さんはどう感じるでしょうか。
公開日時: 2026年7月20日 5:22 · 更新: 2026年9月27日 22:48
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政治資金収支報告書や、国会議論の議事録。これらは私たちの社会を形作る重要なデータですが、実際に目にしたとき、皆さんはどう感じるでしょうか。
多くの場合、そこにあるのは「数字の羅列」や「難解な言葉の壁」です。まるで「テストの問題用紙」を突きつけられたような、退屈さと難しさを感じさせる形式。これでは自分事として捉えるのは容易ではありません。開発チーム内で何度も交わされたのは、「気持ちが湧かない」という率直な言葉でした。
従来の政治情報は、大きく分けて3つの課題を抱えています。
1. 「見えにくい」(どこに何があるか探すのが苦痛)
2. 「分かりにくい」(専門用語ばかりで内容が掴めない)
3. 「とっつきにくい」(自分とは無縁の世界だと感じてしまう)
情報の「公開」と、市民の「理解・親しみ」の間には、依然として埋めがたい溝があります。この「公開と理解の距離」を、デザインとテクノロジーの力で埋める。誰かが「意思」を持って翻訳しなければ、民主主義は身近なものになりません。そんな想いから生まれた2つのプロダクトの設計思想を紐解きます。
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1. 「未来まる見え政治資金」:家計簿と通帳のモチーフによる安心感の創出
政治資金という「硬い」データを、いかにして「触れてみたくなるもの」に変えるか。設計にあたり、私たちは「何っぽく見られたいか」というモチーフから考えました。採用したのは、日常に溶け込んでいる「家計簿」と「銀行口座」です。
- **サンキーチャート(ファーストビュー):**
冒頭に配置したのは、お金の流れを「にょろにょろ」とした線で表現したサンキーチャートです。複数の複雑な表を突き合わせる苦労を排除し、「この1枚で全体像がわかる」という体験を提供しました。この視覚的なフローが、情報の透明感と信頼感、そしてユーザーへの安心感を生み出します。
- **銀行口座・通帳風の明細:**
個別の入出金データは、見慣れた銀行通帳のインターフェースを再現しました。あえて「他の人の通帳を覗き見る」ようなリアリティを追求しつつ、ページ下部には「校内の機密データ流出事故ではありません」といったユーモアのある注釈を添えています。真面目すぎるトーンを崩すことで、心理的なハードルを劇的に下げました。
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2. 「未来議会」:法案という「文字の壁」を突き崩す翻訳の工夫
参議院の法案ページは、時に「無」を感じさせるほどの「文字の壁」です。これを自分事化するために、「未来議会」ではAIとUIを高度に融合させました。
- **ELI5(5歳児でも分かるように説明して):**
ChatGPTを活用し、法案の中身を直感的に理解可能な言葉へ翻訳しました。米国で親しまれている「ELI5(Explain Like I'm Five)」という手法に基づき、複雑な背景を削ぎ落として本質を伝えることで、興味の入り口を作っています。
- **「詳しく/やさしく」の切り替えトグルボタン:**
ここで私たちは大きなジレンマに直面しました。法案は、1947年の吉田茂内閣以来、78年にわたり政治家と官僚が積み上げてきた「専門知」の結晶です。安易な要約は、その重みを損なう恐れがあります。そこで、画面右上に切り替えスイッチを配置しました。専門的な原文を尊重する「詳しく」と、平易な「やさしく」を即座に行き来できる設計にすることで、専門性の尊重と親しみやすさの両立を実現しました。
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3. アクセシビリティへの徹底したこだわり:AIアシスタントとUIの細部
ユーザーが法案を読み進める中で「迷子」にならないよう、UIの細部にはデザイナーとしての「細かい技」を尽くしています。
- **テキスト選択によるAI検索:** 読み進めていて分からない言葉があれば、その場でテキストを選択するだけで、即座にAIへの質問ボタンがポップアップします。別ウィンドウで検索する手間をゼロにしました。
- **質問例の提示:** チャット機能で「何を聞けばいいか分からない」という沈黙を防ぐため、「この法案を一言で教えて」といったクイックボタンを設置。自然にAIとの対話を始められる動線を作りました。
- **スクロールに連動するUI:** 読解を妨げないよう、ユーザーが読み進めている間はAIのテキストボックスが小さくなり、立ち止まって考えたい時には大きく表示されるなど、物理的な心地よさを追求しました。
- **ルビ(ふりがな)機能:** 漢字の難しさが障壁にならないよう、老若男女、あらゆる世代が同じ情報にアクセスできる配慮を徹底しています。
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結論:デザインは政治と市民の距離を縮める「意思」である
今回の試みは、デザインが国政史上初めて、政治家の活動の実態へと本格的に入り込んだ事例です。
私たちは、専門家が積み上げた「専門知」を損なうことなく、いかにして市民に「届ける」かという挑戦を続けています。情報を単に「置く」だけでなく、誰もが「わかる」形に整えること。それは、政治に対する市民の「意思」を呼び起こすための不可欠なプロセスです。
これらのプロダクトは、まだ完成形ではありません。使いにくい点や、さらなる改善案など、皆さんの声こそが最高のアップデート素材です。デザインとテクノロジーを使い、私たちの手で、民主主義をより使いやすく、身近なものへと共に磨き上げていきましょう。
Full stack 技術者