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UI/UXで政治を「自分事」にする。チームみらいが挑む「気持ちが湧く」デザインの舞台裏

政治資金収支報告書を眺めたり、国会の議事録を読み込んだりしたとき、皆さんの心には何が浮かびますか? おそらく、多くの人が抱くのは「無」に近い感情ではないでしょうか。

公開日時: 2026年6月5日 5:29 · 更新: 2026年9月27日 22:48

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1. 導入:なぜ政治には「デザイン」が必要なのか?

政治資金収支報告書を眺めたり、国会の議事録を読み込んだりしたとき、皆さんの心には何が浮かびますか? おそらく、多くの人が抱くのは「無」に近い感情ではないでしょうか。

私たち開発チーム内でも、既存の政治情報に触れた際の共通認識は「気持ちが湧かない」という一言に集約されていました。データは公開されていても、それはまるで無味乾燥な「テストの問題用紙」のよう。どこに注目し、どう感じればいいのかの導線が完全に欠落しているのです。

政治におけるデザインの役割は、単なる見た目の装飾ではありません。私たちの日常と政治の間にある「見えにくい・分かりにくい・とっつきにくい」という3つの厚い壁を、デザインの力で軽やかに飛び越えていくこと。それが私たちの使命です。

本記事では、日本国政史上初とも言える「政治家・国会議員の活動に本格的なUXデザインを導入する」試みについて、サービスデザイナー山根野幸氏の設計思想を軸に、2つのプロダクトの舞台裏を解き明かします。

2. プロダクト1:『みらい まる見え政治資金』――「家計簿」と「通帳」が変革する透明性

政治資金収支報告書という「数字の羅列」を、いかにして「自分たちの生活に関わる生きたお金」として捉え直してもらうか。山根氏が手を動かす前に決めたのは、「何っぽく見られたいか」というメンタルモデルの選定でした。

日常に溶け込む2つのモチーフ:

  • **「家計簿っぽさ」:** 生活に最も密接で、自分たちのお金として親しみを感じられるインターフェース。
  • **「銀行口座っぽさ」:** 誰もが使い慣れており、正確さと信頼を感じさせる入出金明細の形式。

安心感を生む視覚的工夫(サンキーチャート):

ファーストビューで目を引く、ニョロニョロとした曲線が特徴の「サンキーチャート」。この採用には明確なUX上の意図があります。

  • **情報の網羅性による信頼:** 「この1枚を見れば、お金の源泉から用途までのすべてが分かる」という感覚。これが「隠し事がない」という透明性と、ユーザーへの安心感に直結します。
  • **直感的な把握:** 複雑な計算を強いる数字の表とは対照的に、お金の「勢勢」と「流れ」を一目で理解させ、分析のハードルを劇的に下げます。

ユーモアがもたらす親近感:

画面下部の明細は、あえて銀行の通帳を模したデザインにしています。さらに「機密データ流出事故ではありません」といった遊び心のある注釈を添えることで、真面目すぎる政治情報特有の緊張感をほぐし、ユーザーが「少し楽しそう」と感じられる心のゆとりを設計しました。

3. プロダクト2:『みらい議会』――AIとデザインで「文字の壁」を突き崩す

国会で審議される法案の原文は、まさに「文字の壁」。開発チームが初めて原文を読み合わせた際、そこに広がっていたのは「無」の感情でした。しかし、この壁をただ壊すのではなく、どう「翻訳」するかが重要でした。

「詳しく/やさしく」トグルボタンの革新性:

画面右上に配置されたスイッチは、情報のアクセシビリティに対する私たちの回答です。

  • **ELI5(5歳児にも分かる解説):** 米国のネット文化で親しまれる「Explain Like I'm Five」の精神で、AIが法案の本質を噛み砕いて要約します。
  • **78年の専門知への敬意:** 分かりやすさを追求すると情報が削ぎ落とされるジレンマがあります。山根氏は、1947年(昭和22年)の第1回国会から積み上げられてきた政治家と官僚の「専門知」を尊重し、原文と要約を自在に行き来できるハイブリッドな体験を設計しました。

伴走者としてのAIアシスタント:

ユーザーが能動的に学習を深められるよう、UIには「伴走者」のような細やかな挙動を組み込んでいます。

  • **インライン検索:** 読解中にテキストを選択するだけで「AIに聞く」ボタンがポップアップし、即座に疑問を解消できます。
  • **質問の呼び水:** 「何を聞けばいいか分からない」という不安を取り除くため、具体的な質問例ボタンを設置。
  • **動的なUI設計:** スクロール中は邪魔にならないよう小さくなり、読むのを止めると大きく表示されるAIボックス。読解に寄り添い、必要なときだけ手を差し伸べる体験を目指しました。
  • **ユニバーサルな配慮:** 漢字のルビ(ふりがな)機能を搭載。年齢や背景を問わず、誰もが議論に参加できるメディアを目指しています。

4. 結論:デザインが政治と個人の距離を再定義する

政治家と官僚が積み上げてきた高度な「専門知」は、社会を支える柱です。その知見を、誰もが触れ、感じ、考えられる形へと「翻訳」すること。それこそが、公共政策におけるデザインの本質的な価値です。

私たちが挑んでいるのは、単なるツールの提供ではなく、以下の3点による政治体験の再構築です。

1. 日常的なモチーフの活用: 政治を遠い世界の出来事ではなく、家計や通帳の延長線上にある「自分事」として捉え直す。

2. 専門性と分かりやすさの共存: 情報を間引くのではなく、ユーザーが自ら情報の深さを選択できる仕組みを提供する。

3. 対話による継続的なアップデート: 完成版という概念を捨て、使い手のフィードバックを糧に、共にプロダクトを育てていく。

これらのプロダクトは、まだ未完成です。政治をより身近な、体温を感じるものに変えていくのは、実際に利用し、声を届けてくださる皆様一人ひとりの存在に他なりません。

まずは一度、プロダクトに触れてみてください。そこにある「使いやすさ」や「分かりやすさ」が、あなたが政治という航海に参加するための、最初の一歩になるはずです。

唐

唐澤 あきら

Full stack 技術者

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