「エンジェル」の終焉?投資家が仕掛けるビクトリアズ・シークレット取締役会争奪戦の内幕
ビクトリアズ・シークレットを巡る投資家と経営陣の委任状争奪戦。ブランド再生の鍵は、完璧な美から多様性重視への転換にある。
公開日時: 2026年6月17日 7:07 · 更新: 2026年9月27日 22:48
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はじめに:ランウェイの裏で何が起きているのか
かつてランジェリー業界を席巻したビクトリアズ・シークレット(以下、VS)が、今、大きな岐路に立たされている。表面的には華やかなファッションショーやモデルたちの“エンジェル”像が注目を集めるが、水面下では投資家グループが取締役会の支配権を巡って激しいプロキシーファイト(委任状争奪戦)を繰り広げている。本記事では、この企業統治を揺るがす動きの背景と、日本の消費者にとっての意味を読み解く。
プロキシーファイトとは?
プロキシーファイトとは、株主が経営陣に不満を持ち、他の株主から委任状を集めて取締役の交代を迫る手法だ。日本では馴染みが薄いかもしれないが、米国ではよく見られる。今回、VSに対して仕掛けたのは、投資ファンドのBarington Capital Groupや、元VS CEOのMonica Mitroらが率いるグループ。彼らは、VSの業績低迷とブランド価値の低下を理由に、新たな取締役を送り込もうとしている。
なぜ今、VSが標的に?
VSは2010年代後半から苦戦が続いている。セクシーで完璧な美を追求するブランドイメージは、ボディポジティブや多様性を重視する現代の消費者の価値観と乖離し、シェアを奪われた。特に、ThirdLoveやAerieなどの新興ブランドが、ありのままの美しさを訴求して台頭。コロナ禍で店舗販売が落ち込み、2020年には親会社L Brandsから分離されるなど、迷走が続く。投資家グループは、こうした状況を打破するために、マーケティング戦略の刷新やコスト削減、さらにはブランドの分割・売却も視野に入れた改革を求めている。
投資家グループの要求と戦略
投資家グループは、取締役会に3人の候補者を提案。その中には、元ラルフ・ローレンCEOのRoger Farahや、元タルボットCEOのTrudy Sullivanといった小売業界のベテランが含まれる。彼らは、VSが伝統的なランジェリーに固執するのではなく、アスレジャーや水着などカテゴリーを拡大し、オンライン販売を強化すべきだと主張。また、過剰な店舗コストの削減や、ブランドのライセンス戦略の見直しも提言している。
経営陣の反論と現在の状況
一方、VSの現経営陣は、投資家グループの提案は短期的な株価上昇を狙ったもので、長期的なブランド価値を損なうと反論。CEOのMartin Watersは、既に店舗閉鎖や商品構成の見直しを進めており、2023年には増収を達成したと主張する。しかし、株価は依然として低迷しており、投資家の不満は収まらない。2024年5月の年次株主総会で、委任状の賛否が決まる見通しだ。
日本の消費者への影響
日本のVSファンにとって、この争いは遠い話ではない。もし投資家グループが勝利すれば、日本市場でも商品ラインナップやプロモーションが変わる可能性がある。例えば、よりカジュアルなラインの拡充や、日本のインフルエンサーを起用したマーケティングなどが考えられる。一方、経営陣が現状維持を選べば、ブランドのイメージ刷新は遅れるかもしれない。いずれにせよ、VSが“エンジェル”幻想から脱却し、現代の消費者に響くブランドへと生まれ変われるかが鍵となる。
まとめ:ランウェイの先にあるもの
ビクトリアズ・シークレットのプロキシーファイトは、単なる企業買収の駆け引きではなく、小売業界の変化を象徴する出来事だ。消費者が求めるのはもはや“完璧な美”ではなく、自分らしさを認めてくれるブランド。VSがこの戦いをどう乗り越え、新たな“エンジェル”の姿を見せるのか、今後の行方に注目したい。
Full stack 技術者